2017.10.3

「優性・劣性の用語見直し 文科省にも改訂要請へ」

日本遺伝学会は、約1世紀にわたり遺伝学で使われてきた「優性」「劣性」という用語を、それぞれ「顕性(けんせい)」「潜性(せんせい)」に改めると決めました。遺伝子に優劣があるとの偏見や不安を払拭する狙いがあります。同学会は近く一般向けに初の用語集を出版し、普及を図ります。
遺伝学を生んだ「メンデルの法則」は20世紀初め、日本に紹介されました。その頃、ある遺伝子の二つの型のうち、特徴が現れやすい遺伝子を意味する「dominant」に「優性」、現れにくい遺伝子を意味する「recessive」に「劣性」という訳語が当てられ、定着しました。
ヒトの場合、特徴が現れやすい、現れにくい遺伝子の例として▽血液型のA(B)型、O型▽まぶたの二重、一重▽つむじの右巻き、左巻き-などが知られています。それぞれの遺伝子に優劣の差はないが、「優れた」「劣った」という語感が誤解を生みやすく、同学会は10年ほど前から用語編集委員会を中心にインターネットで意見を聞くなどして見直しを進めてきました。
このほかに、同学会は約100の遺伝学用語を見直しました。例えば、「突然変異」(mutation)は原語に「突然」という意味が含まれないため「変異」に。「変異」と訳されてきた「variation」は「多様性」と改めました。また、「色覚異常」や「色盲」という用語については、日本人男性の20人に1人が相当することなどから、「異常と呼ぶのは不適当」との意見で集約。科学的に中立な「色覚多様性」という表現を採用しました。
同学会はこれらをまとめた用語集「遺伝単」(エヌ・ティー・エス)を出版し、文部科学省にも教科書の用語改訂を要請する方針。同学会の小林武彦会長(東京大教授)は「ゲノム(全遺伝情報)解読が進み、遺伝子の多様な役割が分かってきた時代に合わせた用語改訂だ。広く社会にも定着してほしい」と話しています。

毎日新聞より引用