ポピドンヨードは細菌やウイルスを強く叩く効果があります。

しかし、「風邪を予防するためにどんなうがいが有効か」というテーマの研究では、水飲のみと、ポ ピドンヨードでのうがいを比較した場合、水のみのうがいの方がポピドンヨードよりも有効だった という結果があります。 ポピドンヨードは強力な殺菌性ゆえに、喉や口の中にもともといる「正常な細菌」を叩いてしまい、 さらには粘膜なども痛めてしまうからと考えられます。

また、一般的に、ポピドンヨードのうがい 薬の安全性は高いと考えられますが、長期使用に関しては甲状腺機能を障害する可能性が指摘され ています。そのため長期に使用する場合は定期的な検査が推奨されます。 今回の報道での研究結果は、今年 6 月から 7 月にかけて新型コロナウイル陽性者のうち軽症者 40 人を対象にポピドンヨードによるうがい薬で、1 日 4 回うがいをしてもらったところ、その他の患 者よりも唾液の中のウイルスが減ったということです。具体的には、うがいをした患者は 4 日目に 唾液の PCR 検査の陽性率が 9%ほどになったのに対し、うがいをしなかった患者は陽性率が 40% だったということです。

ポピドンヨードによるうがいをすると、唾液の中の新型コロナウイルが減っても、その後の新型コ ロナウイルによる症状の悪化が防げるという研究結果ではないのです。PCR 検査の陽性率が下がっ た、という結果です。検査結果を良くしても最終的にはデメリットが大きくなってしまう可能性も あるということです。今のところ、ポピドンヨードによるうがいに関しては、「答えを明確に出せな い、長期使用による害もあるかもしれない」という事です。 うがいによって一時的に新型コロナウイルが検出されにくくなっただけなのかもしれないのです。 (インフルエンザによる検査では、喉で検査をすると偽陰性になりやすいので、通常は鼻から検体 を採取します。)

一方、うがいのメリットとしては、一時的に人に感染させるリスクを減らす効果があると考えられ ます。 飛沫の中に含まれる新型コロナウイルの量を短時間減らし、「飛沫による拡散を一時的に減らす」効 果が期待できます。無症状の新型コロナウイル感染者が 3~4 割いると推定されています。 エアロゾルがたくさん出そうな処置をしなければならない時、その前にうがいをしっかりするとい いかもしれません。 実際に、歯科医での処置の前にうがいをしっかりすると、歯科医への新型コロナウイルの感染リス クを低減するかもしれないという考えも報告されています。

新型コロナウイルに限らず、歯磨きなどで口の中を清潔に保つと、肺炎などのリスクが下がること がわかっています。PCR 検査を陰性化させることが目的というより、口の中の清潔を保つことを優 先させるためには有効であると思われます。

(日本アレルギー学会専医より)