夏に熱が出た、のどが痛い。これまでなら、いわゆる「夏風邪」と片付けられることが多かった症状でも、新型コロナウイルスが広がっている今は、不安になるかもしれない。

夏風邪は、いくつかの病気の総称。たとえば「プール熱」とも呼ばれる「咽頭結膜熱」。発熱やのどの痛み、目の充血、目やになどが主な症状。「手足口病」は、手や足、口の中、のど、おしりに小さな水ぶくれのような発疹が出る。熱や腹痛、下痢の症状が出ることもある。「ヘルパンギーナ」は、口の中やのどに赤い発疹や水ぶくれ、少しへこんだ潰瘍ができ、高い熱が続くことが多い。

夏風邪は、冬に流行する風邪とは違い、比較的高い温度、湿度の環境を好むウイルスが原因になる。プール熱はアデノウイルス、手足口病とヘルパンギーナはコクサッキーウイルスなどエンテロウイルスの仲間が原因。

また、夏風邪とはちがうが、高熱などの症状が出るインフルエンザが、夏にはやることもある。東南アジアなどでは夏に流行することも多く、国内でも沖縄県で近年は夏に流行する傾向がある。2012年8月には大阪府内の病院で集団感染が発生した。

夏風邪は幼い子どもがかかることが多いが、大人でもかかる場合があり、重症化することもある。こうした夏風邪やインフルと、流行している新型コロナウイルス感染症は、どうやって見分けたらいいのだろうか。

川崎医科大学の中野貴司教授(小児科)は「新型コロナウイルスも発熱やのどの痛みなどが出ることもあり、症状だけで見分けるのは難しい」と話す。

プール熱の原因となるアデノウイルスには迅速検査キットがあるが、もし患者が新型コロナに感染していれば、検体を採取する際に感染リスクがある。中野教授は「医師の側もむやみに迅速診断をせず、症状から病名を判断するようになっている」と指摘する。

夏風邪かどうかわからないときに、新型コロナかどうか確かめるのも難しい。迅速検査キットが普及しておらず、多くの場合は帰国者・接触者外来などでのPCR検査に頼るしかない。

ただ、PCR検査はいまのところ、発熱などの症状があっても、すぐに受けられるわけではない。国の方針では医師が必要と判断すれば検査が受けられるが、患者が希望してもすぐに受けられなかったという報告も相次いでいる。

「周囲の流行状況やほかの人との接触歴、家族の感染状況から新型コロナの可能性を見極めていくしかない」

やはり肝心なのは、感染予防。夏風邪の予防法も、新型コロナウイルスの予防法と変わらない。いずれのウイルスも、せきやくしゃみ、大声などによる飛沫感染や、ウイルスにふれた手指などで口や目をさわる接触感染によって広がるからである。

(朝日新聞引用)