感染すると肺に大きな損傷を与える新型コロナウイルス。
しかし、実際には、肺だけでなく、内臓や足の 指先、脳内にいたる全身に深刻な損傷を与える。

山梨県で新型コロナに感染した 20代男性が髄膜炎を発症し、コロナから回復して退院したのちも、この 1-2年間の記憶を失った事例があった。
そのケースでは、コロナが脳に達して脳炎を引き起こした 可能性が指摘されている。
埼玉県の 60代男性も 5月に集中治療室から出たのち、目は開いているけれど意識がもうろうとする「せ ん妄」を発症した。

新型コロナが直接脳に影響を及ぼす可能性は、海外でも指摘されている。
英ケンプリッジ大学で神経科学を研究するエド・ブルモア教授は新型コロナの患者には精神病の「気分 障害」と「認知障害」が多くみられると主張した。
ブルモア教授は SARSのデータなども踏まえて、記憶障害、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)、うつ病、 不安、不眠症などの精神医学的後遺症が、新型コロナから回復したのち数年先まで続く可能性があると も語った。

日本でも同様の指摘がある。 自治医科大学附属さいたま医療センクーの医師の調査では、新型コロナで退院した患者の 25%に PTSD やうつなどの精神症状が生じた。
入院中の記憶が突然よみがえる「フラッシュバック」などの症状も みられたそうだ。

新型コロナは血管の内側の細胞に侵入し、血を固めて血栓をつくる。
その血栓が脳梗塞や心筋梗塞 を引き起こし、突然死を招く可能性がある。
新型コロナから回復したのちでも、血が固まりやすく、血栓が生じやすくなっている可能性がある。
また危険な血栓を放置すると、肺炎の症状が治まっても数日から数か月の間に血栓が障害を起こす可能 性も指摘されている。
後遺症として脳梗塞や心筋梗塞などを発症する恐れもあり、充分な警戒が必要 だ。
血栓は年齢に関係なくできやすいとされるので、すべての世代で注意が必要となる。腎臓への影響も 懸念される。

アメリカでは、新型コロナの重症患者の 2-4割が、後遺症として急性腎不全を発症すると報告されている。
また、重度の腎障害がある患者が感染すると、長期的な影響を受けると指摘されている。
新型コロナが味覚や嗅覚を感じ取る細胞を殺してしまうと、その再生には数か月かかるケースがあるとされる。
実際に新型コロナに感染した都内の 30代女性は、退院後も 1か月以上にわたって味覚や嗅覚 障害が残った。

重度から軽度まで、幅広い後遺症の心配がある新型コロナ。
何も症状がなかったからといって、自分には 関係ないと思ってはいけない。

(トムソンロイター・ジャパン(株)より引用)