2018.09.11

「IOTを活用して無理なく生活改善」

 

糖尿病患者が血糖コントロールを改善するためには、体重管理や運動の習慣化を行うことが重要だ。 医師や保健指導者は、診療や保健指導を通して、自己管理のノウハウを提供し、動機づけを患者に行っている。 しかし、生活習慣病スタイルを変えていくのは患者自身だ。糖尿病患者が治療に対するモチベーションを維持し、治療からの脱落を防ぐために、これまでの医療機関からの一方通行の情報伝達だけでは十分ではない。

「PRISM-J」は、糖尿病患者が「IoT」を活用して、無理なく生活改善に取り組みながら、血糖コントロールと生活の質(QOL)を改善できる手法を検証する研究。今後の糖尿病治療のあり方に大きな変革をもたらす可能性のある取り組みとして注目されている。

「IoT」(アイオーティー)とは、身の回りの機械がインターネットを通じてつながることで実現する新たなサービスや技術のこと。

活動量計・体重体組成計・血圧計などのデバイスやアプリの使い方については、スタッフが分かりやすく教えてくれるので、初心者や高齢の人でも無理なく研究に参加することができる。 研究では具体的に、スマートフォンアプリを日常的に使用している2型糖尿病患者2,000人を研究対象にし、そのうち1,000人の患者に「七福神アプリ」を使用してもらう。研究を1年間行い、HbA1cの変化を比較する。

さらに、「七福神アプリ」により日々の健康情報にもとづいたメッセージを受けることで、血糖コントロールの改善効果を検証する。

「七福神アプリ」とは、あいち健康の森健康科学総合センター(津下一代センター長)が経済産業省の「IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業」の結果にもとづき、バージョンアップして開発したスマートフォン専用アプリケーション。

測定データは「七福神アプリ」に連動する。アプリでは、患者が食事や運動をよりよく自己管理できるようにするために、七福神のキャラクターが測定データをもとに励ましのメッセージを呼びかける。

週2回の応援メッセージを表示するほか、4週間ごとに測定値の平均と目標値との差分などをまとめたサマリーも表示する。測定しない日が続くと、アラートを通知し、脱落を防止する。

「七福神」のそれぞれのキャラクターには担当があり、測定値や記録により褒めたり喜んだり、時に悲しんだりする。たとえば働き者の恵比寿は歩数の管理、少しお腹の出た布袋尊は体重管理など、測定状況に応じて表情などを変えながらコメントする。 アプリは使い勝手が良く、初心者でも使いやすいように工夫されている。メッセージを定期的に受信することで、自然に糖尿病の人の行動の変化を促し、HbA1cを改善する効果が期待されている。

週2回届く七福神からメッセージは多彩だ。頑張って効果が出れば「がんばっておられて、うれしゅうございます」と褒めてくれるし、運動を少しさぼった時は「もう少し動かんと体力が落ちるぞ」と激励してくれる。

毎日の健康管理に伴走してくれるので、楽しみながら続けられる仕掛けになっている。「七福神アプリ」のデータは、専用クラウドにも転送され、医師や保健指導者が遠隔で患者の様子を確認することもできる。

今後、スマホを使用した診療や健康指導など診察スタイルが変化してくる時代となります。私たちも診療スタイルの変更に伴い、頭を柔らかく、機械の取り扱いもすぐに覚えられるようにしていくことが大切だと実感しています。

 

糖尿病リソースガイドより引用