2018.01.24

「粒子線治療」

厚生労働省は17日、がん粒子線治療について、4月から前立腺がんや頭頸部がんの一部に公的医療保険を適用する方針を決めました。厚労省の諮問機関である中央社会保険医療協議会で同日、了承されました。現在は自費だけで300万円前後かかっていますが、保険適用で患者の自己負担が軽くなります。

粒子線治療は、水素の原子核である陽子や、より重い炭素の原子核である重粒子線を加速器でビームにし、がん細胞に集中的にダメージを与える治療法です。従来のエックス線治療に比べ、ピンポイントで患部に照射することができます。

エックス線やγ線は身体の表面に近いほど強く、奥に入るほど弱くなる性質があります。これに対して、陽子線は奥に入るほど強く、エネルギーを放った後で弱くなり、重粒子線はさらに特の場所で最大の線量を示す特徴があります。

2016年に小児がんの陽子線治療と、手術が難しい骨や筋肉のがんの重粒子線治療が保険適用になっています。

新たに保険適用されるのは、転移がない前立腺がんと、頭頸部がん(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)に対する陽子線と重粒子線の治療のほか、手術で切除できない骨や筋肉などにできる骨軟部腫瘍への陽子線治療です。

前立腺癌は、粒子線治療を受ける患者数が年間約1700人と最も多いです。しかし、先進医療に指定され、必要な検査代や入院費など一部にしか保険が使えません。16年にも保険適用が検討されましたが、「他の治療法に比べて優位性が認められない」と判断され、見送られました。今回は最新の治療実績やデータを踏まえて対象となりました。

現在、日本には粒子線がん治療施設が16ヵ所(重粒子線:5ヵ所、陽子線:12ヵ所)あります。治療施設数においては世界で一番多い国となっています。
(群馬県は群馬大学医学部付属病院重粒子線医学研究センター)

 

毎日新聞、読売新聞引用