2017.10.23

「介護報酬改定の議論の動向について」

(9月10日付読売新聞 「自立促す介護 広まるか 『報酬で評価』に賛否 」より抜粋)
むやみに手助けするのでなく、適切な食事やリハビリを取り入れ、一人で出来ない部分をサポートする「自立支援型」の介護をどう普及させるか。介護報酬の2018年度改定に向けて、こんな議論が本格的に始まった。報酬を手厚くするよう求める声がある一方、評価の難しさから慎重論も多く、賛否が分かれている。
「訓練をして要介護度が改善しても、事業者にとっては減収になる。こうしたジレンマを緩和すべきだ」介護報酬について議論する社会保障審議会分科会で8月23日、制度の矛盾を指摘する声が相次いだ。現在の制度では、入所施設などで事業者が努力して利用者の要介護度を軽くできても、介護にかかる手間が減るとして、受け取れる報酬は少なくなる。例えば、介護付き有料老人ホームの入居者の要介護度が5から4に下がると1人につき月2万円ほどの減額だ。現場からは「『歩きたい』という本人の望みをかなえようと努力すると先輩に怒られる」といった声が上がっているという。
こうした事情を踏まえ、政府は、「効果のある自立支援を行う事業者を報酬で評価する」ことを成長戦略に明記し、来年4月の改定に向け、分科会で具体策を検討することとした。高齢化で増え続ける介護費用を抑えられるのでは、との思惑もある。
ただ、要介護度の改善ばかり重視されることに、慎重な意見も多い。分科会では、「改善が見込まれる高齢者を事業者が選別する恐れがある」といった意見が出た。認知症の90歳代の人は、骨折で入院した60歳代の人より身体機能が回復して要介護度が改善する可能性が低い、などと判断され、利用を断られる恐れもある。
「要介護度だけでは、本人の意思を十分にくみとれない」という見方もある。介護保険制度の理念は、介護サービスを使わずに暮らせることではなく、周囲のサポートも得ながら、最期まで本人が望む生活を送れることとされてきたためだ。こうした課題を踏まえ、分科会では、身体機能の改善といった成果だけでなく、専門職による訓練の実施といった過程の要件も組み合わせて評価することなどが提案された。「身体機能の改善は伴わなくても、介護職員と家族と一緒に外食をしたりと、生活の質を向上させることは可能」などと、生活の質の向上を評価するよう求める声も多かった。
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上記の記事にある、介護報酬改定の鍵を握っている社会保障審議会ですが、10月16日付毎日新聞によると、突然の衆院解散により、月2,3回あった会が9月13日以降は開催されておらず議論はとまっているそうです。次の審議会では、改定の基礎資料となる介護事業経営実態調査の結果を公表する予定でした。今回の調査結果は、介護報酬の引き下げを主張する後押しになるデータも含まれているとのことで、引き下げ論が強まれば介護事業者らの反発も予想されるため、「選挙に影響を与えないために公表を遅らせた」と厚労省幹部は明かしています。
その選挙も終わり、厚労省のHPをみると、ようやく今週25日、審議会が再開されるようです。議論の行く末を注意深く追っていきたいと思います。