2017.9.21

「在宅等での見取りにおける死亡診断書の要件緩和」

医師による対面が原則の死亡診断書について、厚生労働省は今年度内に規制を緩めるガイドラインを策定した。高齢化に伴い自宅や介護施設での見取りが増加していくなか、在宅での看取りが困難な現状にあることに対応するため、現在の医師法第20条の但し書きの要件「受診後24時間以内に診療中の疾患で死亡した場合のみ、改めて死後診察しなくても死亡診断書を交付することが出来る」を➡「受診後24時間を経過していても以下のa~eの全ての要件を満たす場合には、医師が対面での死後診察によらず死亡診断を行い、死亡診断書を交付できる」とするよう、早急に検討して規制を見直すこととされた。
a:医師による直接対面での診療(14日以内)の経過から早晩死亡することが予測されていること
b:終末期の際の対応について事前の取り決めがあるなど、医師と看護師の十分な連携が取れており、
患者や家族の同意がある事(決められた様式の書面)
c:医師間や医療機関、介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること(12時間以上を要する場合)
d:法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆項の確認を含め医師とあらかじめ取り決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること
e:看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等のICТを活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握できることなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること
このような条件下で看護師が患者宅を訪問して心停止や呼吸停止、瞳孔の開きを間隔を置いて2回確認、
外傷の有無なども観察し、スマートフォンやタブレット端末で遺体の写真などと共に医師に送る。医師は「死亡」と確認すれば、看護師に死亡診断書の代筆を指示し、医師はテレビ電話などを通じて遺族に口頭で説明する。
これを受けICTを利用した死亡診断を行うにあたっての留意点も検討された。
◎遺族にとって死後診察は医師からの死亡の事実のみならず、これまでの経過等に関する医学的説明を受ける機会であり、極めて重要な意義を持つ。また死亡診断書は法律上の重要性が高く、その記載内容が正確でなかった場合、死因統計が不正確になる等社会に大きな影響が懸念される。医師は礼意と細心の注意をもって死後診察を行い、死亡診断書を交付しなければならない。
◎また、早晩死亡することが予測され、終末期医療を行ってきた患者であっても。ベッドから転落した際の頭部打撲が原因で死亡したり、病気を苦に自殺したり、苦しむ姿を見かねた家族が殺害したりと、
診療継続中の傷病以外の原因で死亡する例も存在する。医師法が自ら診察することなく死亡診断書を交付することを禁じているのもこのような事例を見逃すことを防ぐ趣旨である。
◎直接対面での死後診察と同程度に死亡診断書の正確性が保持され、遺族と円滑なコミュニケーションを図ることが出来る等の条件が満たされていなければならない
◎ICТを利用した死亡診断を試みたが、直接対面での診察に代替しうる程度の診察を行うことが困難と認める場合には、ICТを利用した死亡診断を中止し、直接対面による死後診察を行い、その上で生前に診療していた傷病に関する死亡であると判断できない場合には所轄警察署に届け出なければならない。

厚生労働省「情報通信機器(ICТ)を用いた死亡診断書等の取扱いについて」