• 日時:平成28年10月22日(土)
  • 場所:並木苑
  • 講演内容:
  • 第一部 「安中市の医療と介護の現状」~事例を通して~
  • 事例発表
    社協安中本所在宅介護事業センター 茂木妙子介護支援専門員
    訪問看護ステーションせせらぎ 本律子訪問看護師
  • 安中医師会より「安中市における地域包括ケアシステム」の現状
    いわい中央クリニック院長 神保 裕之先生
  • 第二部 演題:「武蔵野市における地域包括ケアと在宅医療介護推進事業」
  •     講師:東京都武蔵野市健康福祉部地域支援課部長 笹井 肇様
  •     公開ディスカッション(事例・講演を受けて)
  •     座長:群馬県医師会長 須藤 英仁先生
  • 参加人数:446名
安中市の地域包括ケアシステム 平成28年10月22日(土)

「安中市における地域包括ケアシステム」の現状

安中市医師会在宅療養担当理事

いわい中央クリニック 神保 裕之

日本人の平均寿命が伸び続け、700万人とも800万人とも言われる団塊の世代が高齢者世代に突入した日本は、これまで経験したことのない超高齢化社会となった。こうした現状を受けて問題となっているのが、高齢者の介護や医療の供給不足、もしくは実情にそぐわない介護・医療サービスの姿である。これまでの高齢者への医療や介護のあり方を根本的に見直さなければいけない時期にさしかかってきていると言える。高齢化に伴う介護・医療を取り巻く問題を国として、そして国民として上手に乗り越えていこうとする非常事態宣言が、地域包括ケアシステムである。

安中市医師会では地域包括ケアシステムの要である在宅医療を事業の一環として推し進めている。疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けられるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要である。
安中市医師会では「病院暮らしはつらい、家に帰って家族と過ごしたい」「歳で車を手放した、診療所まで通えなくなった」「最期は自宅で、自分らしく全うしたい」など様々な気持ちにこたえられるように地域包括ケアシステムとその要である在宅医療の整備を急ピッチに進めている。
現在までの安中市行政と安中市医師会の取り組みは安中市を人口の分布や社会資源の状況、地理的条件等を勘案して介護・医療の相談、医療サービスを提供する単位として3分割して日常生活圏域の設定をした。この医療圏内で発生する医療・介護に関わる問題はこの地域内で原則解決していき、それぞれ中核となる病院を選定し後方支援病院となっていただいた。具体的には以下のとおりである。

  • 安中圏域(安中、岩野谷、板鼻、秋間)では須藤病院、正田病院、
  • 原市圏域(原市、磯部、東横野、後閑)では碓氷病院、本多病院、
  • 松井田圏域(松井田町全域)では松井田病院である。

安中市医師会では、医師会に属する診療所、クリニックのほぼすべてで訪問診療が可能であることがわかった。今後24時間365日体制で必要に応じて緊急往診、入院先の手配をおこなう在宅支援診療所の割合もますます増えていくことと考える。
安中市医師会の推進目標は各診療所・クリニックからの紹介により入院治療が必要な患者様の受け入れは、各圏域の後方支援病院が責任をもって行う。必要な入院治療を施し退院が可能になった場合、退院時カンファレンスを後方支援病院内で診療所の医者とともにおこなう。退院後は確実に各診療所の先生が引継ぎ、外来での治療を継続する。よくあることだが、退院後に在宅医療が必要になる事例がとても多い。その際、在宅医療が必要になった場合には紹介元の診療所・クリニックの医者に確実に引き継いで在宅医療をしてもらう。月に一度、後方支援病院に多職種が集まりケアカンファレンスを開催し情報交換をおこなう。サービス付き高齢者住宅、老人ホーム等の施設で医療の提供が必要な患者および主治医がいない利用者には積極的に診療所の医者を紹介して積極的にかかわっていただく。
現在この地域包括ケアシステムがしっかりと稼働しているのは安中圏域のみである。須藤病院をバックアップ病院とした地域包括システムがすでに稼働している。今年の9月で1年を迎える。現在もシステムは多種職が集まり議論がなされてますます規模も拡大している。松井田圏域の松井田病院及び、原市圏域の公立碓氷病院も稼働体制に入っており同様なシステムでもうすぐ稼働する予定となっている。次の段階としてこの3圏域を横につなげた広域のシステムを稼働できることにより、安中市内全域の地域包括システムは本当の意味で完成されることとなる。
この広域のシステムを横につなげる要こそが在宅医療・介護連携支援センターの設立である。
在宅医療・介護連携支援センターの目的は市内に散在する問題ケースを地域包括支援センターが吸出し、それを在宅医療・介護連携支援センターが上記の3圏域の医療包括システムに情報を整理して振り分ける仕事を担うことにある。車でいえばエンジンの動力とタイヤをつなぐクラッチと言ったらわかりやすいだろうか。安中市と安中市医師会は連携して在宅医療・介護連携支援センターを安中市医師会内に設立する方向で話し合いがもたれているが、1日も早い設立を望みたい。