2018.10.16

「大腸がんのスクリーニング」

 

大腸がんはがんの中でも多くの人が経験するものです。このため、明らかな異常などが見つかっていない人に対しても検査を行われます。大腸がんやその手前の状態を早期発見して治療することで、大腸がんによる死亡を減らすことが期待されています。

このように明らかな異常がない人も対象に含める検診をスクリーニングと言います。大腸がんのスクリーニングによる予防効果はすでに多くの研究から示されていますが、対象とされるべき年齢は何歳から何歳までかといった詳細については複数の学術団体などが違った意見を出しています。

アメリカがん協会は、2008年に作成したガイドラインを更新し、大腸がんのスクリーニングについて新しく推奨をまとめました。

このガイドラインは、大腸がんのリスクが平均的と考えられる人を対象としています。更新前の2008年版ではスクリーニングを勧める対象年齢が50歳以上とされ、上限は明記されていませんでした。更新にあたって、最近の研究結果も反映させるよう新たに調査が行われました。調査の結果に基づいて、更新後の2018年版ではスクリーニングを勧める対象年齢が45歳以上とされました。また、対象年齢の上限について、更新後は75歳を超えた人には個別判断を勧め、85歳を超える人にはスクリーニングを行わないよう勧めるとされました。

スクリーニングを始める年齢については、近年アメリカで50歳未満の人に大腸がんが増えていることが考慮されました。アメリカでは、50歳未満で大腸がんが見つかる人は(50歳未満のスクリーニングは一般的ではないにもかかわらず)1994年ごろから増加傾向にあり、2014年には45歳から49歳で10万人あたり31.4人でした。対して50歳から54歳の人では10万人あたり58.4人であり、50歳以上ではスクリーニングが多く行われていることを加味すると、45歳から49歳で大腸がんが発生している人の割合は50歳から54歳にかなり近いと推定されました。

45歳からスクリーニングを開始した場合の予防効果を直接調べた研究は少ないため、有効性に基づいて判断することはできませんでしたが、従来大腸がんは50歳以上で多く診断されることを根拠としてスクリーニングが行われてきたことから、45歳以上の大腸がんが増えていることを受けて、スクリーニングを始める年齢の推奨が変更されました。

スクリーニングを終える年齢については、スクリーニングによる予防効果が現れ始めるまでに10年程度かかるため、余命が10年以上ある人は受けたほうが良いと考えられました。

年齢ごとのスクリーニングの効果を調べた研究によると、70歳から74歳の人では全大腸内視鏡検査のあと8年間の大腸がんによる死亡の割合が2.62%から2.19%に減少しましたが、75歳から79歳の人では2.97%から2.84%とわずかな減少にとどまりました。対して全大腸内視鏡による出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの害は、70歳から74歳では検査1,000回あたり5.6件、75歳から79歳では1,000回あたり10.3件発生していました。 これらの割合から、76歳以上85歳以下の人の中でも、健康状態が良くほかの持病が全然ないかわずかしかなく、余命が10年以上と予想される人だけがスクリーニングを検討するべきと考えられました。また、85歳を超える人については、スクリーニングによる害が利益を上回ると推定されました。

スクリーニングとして行う検査の種類については,免疫化学法による便検査を年1回,高感度グアヤック法による便潜血検査を年1回,多標的便DNA検査を3年ごと、全大腸内視鏡検査を10年ごと、CTコロノグラフィを5年ごと、軟性S状結腸鏡検査を5年ごとです。

 

上記のような推奨はほかの学術団体などからも出されていて、アメリカがん学会の推奨はあくまで一例です。特に、上の説明でも触れたように、アメリカでの統計を元に作られている点には注意が必要です。

最新のガイドラインを参考にすることで、検診の目的と効果について理解を深めていきましょう

 

MEDLEY より引用