2018.9.3

 

障害者雇用水増し  (上毛新聞論説)

 

中央省庁が法律で義務付けられた障害者の雇用割合(法定雇用率)を偽っていた問題で、国税庁や国土交通省などの国の行政機関の8割、27機関で雇用水増しが横行していたとの調査結果を政府が公表した。昨年時点で雇っている約6900人のうち3460人は水増しで、実際の雇用率は法定を下回る1.19%だった。

 

働く喜びを通じ、障害のある人の自立を支えるのが障害者雇用促進法の理念だ。

「経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活で能力を発揮する機会」の実現を率先すべき「官」の背信が、条文の理念にむなしく響く。

 

雇用水増しは地方自治体でも発覚が相次ぎ、全容はいまだにつかめていない。意図的に数字を操作したのか、法的解釈の誤りなのか、判然としない。水増しの陰で働く機会を失った障害者は怒りで言葉もないに違いない。雇用率達成に努めてきた民間企業にすれば冷や水を浴びせられた思いだろう。

 

1960年に身体障害者雇用促進法が制定され、知的障害に徐々に広がり、今年4月には神経障害も加わった。法定雇用の目標率は地方自治体で2.5%、民間企業で2.2%と徐々に引き上げられている。同様の制度を持つドイツでは5%、フランスでは6%と日本より高い目標を掲げている。

 

雇用率に算入できる障害者は身体、知的、精神の障害者手帳を確認することが原則で、例外的に指定医の診断書も認めている。今回、中央省庁の役人は手帳所持の確認を怠っただけでなく、「視力が弱い」場合でも障害者雇用に算入したケースも判明している。

 

雇用率を守れないと民間企業には1人当たり5万円の罰則があるが中央省庁に

は罰則はない。不正にはペナルティーを科す仕組みを整えるべきだ。

 

宅配便事業の生みの親でヤマト運輸会長を務めた故小倉昌男さんは障害者福祉に尽力した。生前、政府の会議に呼ばれ「障害者は能力が劣ると経営者は思いがちだが、実際に雇ってみると、社員に思いやりが生まれ、本業にもいい影響が出た」と生前語っていた。

 

公僕たる官には障害者雇用促進法の理念に立ち返り、今回の雇用水増しの真相究明と再発防止策の確立が急がれる。