2018.1.15

「かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ」

かかりつけ医機能を持つ医療機関について、初診に係るコストを考慮した評価を行ってはどうか。と1月10日に開催された、第382回 中央社会保険医療協議会 総会で、議論が行われました。
2013年8月に取りまとめられ、現在進められている社会保障・税一体改革のベースとなっている「社会保障制度改革国民会議報告書」では、外来医療の機能分化を進める方針が打ち出されています。
「診療所や中小病院が一般外来を受け持ち、大病院は紹介・専門外来に特化すべき」との方針で、これまでの診療報酬改定等でも紹介状なしに大病院外来を受診した患者の特別負担(初診5000円以上、再診2500円以上)主治医機能を評価する【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】などの創設・拡充など、外来医療の機能分化に向けた見直しが行われてきています。
2018年度の次期改定においても、当然、同じ方向が打ち出されており、紹介状なし外来受診患者から特別負担を徴収する病院の拡大【地域包括診療料】などの要件緩和、オンライン診察・医学管理の診療報酬上の評価新設などが既に議論されています。1月10日の中医協総会では、これらに加えて、「かかりつけ医機能のさらなる評価」案が厚生労働省保険局医療課課長から提示されました。2018年度の次期診療報酬改定に向けた基本方針や、政府の財政再建に向けた計画の改革工程表に盛り込まれた「かかりつけ医機能の推進」をさらに強化していく狙いです。
・日常的な医学管理と重症化予防:▽疾病教育▽生活指導▽治療方針の決定▽服薬管理▽服薬指導▽治療効果の評価▽重症化の予防・早期介入など
・必要に応じた専門医療機関などとの連携:▽専門医療機関への紹介、助言▽合併症に応じた療養指導▽急性増悪への対応など
・在宅療養支援・介護との連携:▽在宅医療を行う場合の管理・療養指導▽服薬管理▽服薬指導▽要介護状態などに応じた療養指導▽介護との連携▽急性増悪への対応▽看取り支援など
こうした機能を評価する診療報酬項目として、【地域包括診療料】【地域包括診療加算】などがありますが、算定対象は「高血圧症、脂質異常症、糖尿病、認知症のうち2疾患以上を有する患者」地域包括診療料、「認知症と他疾患を合併する患者」認知症地域包括診療料などに限られています。また、そもそも「施設基準などが厳しい」と指摘され、2016年度の前回診療報酬改定で緩和したものの、届け出医療機関数は2016年7月時点で6000施設に届いていません。2018年度改定で緩和される見込みです。
そこで迫井医療課長は、初診に係るコストに着目し、「初診患者の診療を担う機能については、大病院ではなく、『患者が気軽に相談できる機能』や『専門医療機関へ紹介できる機能』を有する医療機関による、より的確で質の高い診療機能を評価してはどうか」との論点を提示しました。具体的な制度設計は、今後の議論を待つ必要がありますが、例えば、「患者が気軽に相談できる機能」や「専門医療機関へ紹介できる機能」を持つ医療機関(診療所や中小病院)について、【初診料の加算】(かかりつけ医機能加算など)を新設することなどが考えられそうです。初診のほうが、再診に比べて、診療時間が長くコストがかかる傾向にある。
この提案を診療側委員は歓迎。日本医師会常任理事は「継続的な診療を行っている再診患者でも、新たな病気を発見した場合には、初診患者と同様にコストがかかる。今後は、この点の評価も検討してほしい」と求めています。これに対し支払側の全国健康保険協会理事や日本労働組合総連合会総合政策局長は「かかりつけ医機能の推進」という方向性には異論を唱えていないものの、「対象医療機関の要件」を厳格に規定するよう要望。健保連理事は「同じ診療行為について、医療機関の基準などで報酬が差別化されることに違和感を覚える」と述べ、「慎重な制度設計」厳格な施設基準設定などを求めています。
さらに日本労働組合総連合会は「『患者が気軽に相談できる機能』や『専門医療機関へ紹介できる機能』は、かかりつけ医として当然の機能ではないか。そこを評価して患者に負担増を強いることに違和感を覚える」と指摘しました。このように、方向性そのものは「概ね了承された」と言えますが、具体的にどう点数をつけ、施設基準などをどう設定するかでは、診療側・支払側で意見の隔たりもあり、今後の詰めの議論に注目が集まります。ちなみに、2016年の初診料算定回数は2億1300万件程度と推測されます。「全診療所が対象となる」と仮定した場合、新加算が1点であれば21億円余り、2点であれば43億円弱、3点であれば64億円弱、の医療費増が見込まれる計算です。

 

メディウォッチより