29.11.20

「2018診療報酬改定の中身 中医協の議論から方向が明らかに」

高齢者の医療ニーズが増大する2025年に向けて、2018年度診療報酬・介護報酬同時改定は医療・介護の大きな制度改革を進める実質的に最後の機会です。財源をめぐる攻防が続く中、新機軸の方向性も打ち出されています。
財源面については、2015年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」が重要な意味を持ち2016~2018年度を集中改革期間と位置づけた同方針では、社会保障関係費の増加を3年間で1.5兆円程度、単年で約5000億円の伸びに抑えるよう提示。厚生労働省は2018年度予算の概算要求で高齢化などに伴う増加分として6300億円を要求しており、差額の1300億円を圧縮しなくてはなりません。
加えて、2018年度予算では別に財源の手当てが必要な項目として、「子育て安心プラン」による約10万人分の保育の受け皿確保に約500億円が計上されています。そのため、2018年度の予算編成では社会保障関係で総額「1800億円」の圧縮が求められるわけです。1800億円の圧縮策として財務省が想定しているのは2018年度診療報酬・介護報酬改定、生活保護・生活困窮者の自立支援制度や児童手当特例給付の見直しなどのほかに協会けんぽへの国庫補助見直しも候補に挙がりそうです。中でも診療報酬改定は、全体改定率マイナス1%で約1100億円の国費負担を削減できるため、財務省は攻勢を強めています。財務省主計局の担当官は「医療保険制度の持続可能性を考慮すると、診療報酬の全体改定率をマイナス2%台半ば以上にすることが必要だ」と指摘します。国民医療費が年2.6%のペースで増加しているのに対し、それを支える雇用者報酬は年1.3%しか伸びていません。そのために健康保険組合などで保険料率が上昇し続けており、両者の伸びのバランスを取るにはマイナス2%台半ば以上の改定率が必要だとのことです。
財務省は診療報酬本体も、賃金や物価の水準に比べて高止まりしているためマイナス改定を実施すべきと主張。当然、日本医師会はこれに強く反発しており、年末の予算編成に向けて攻防が激しくなりそうです。
7対1、10対1一般病棟では看護配置を主軸とした入院基本料から入院患者の重症度や医療の必要度を反映した報酬設定への移行が論点となっており、何らかの方向性が示されそうです。外来ではかかりつけ医機能の充実に向けた見直しが行われ、ICTを使った遠隔診療も評価される見込みです。また、次回は診療報酬と介護報酬の同時改定のため、医療介護の連携を促進する動きも強まりそうです。退院時に加えて入院前からの状態把握によ入退院支援のほか、維持期リハビリの介護保険への移行を促す内容が盛り込まれると考えられます。
地域医療構想や医療計画、医療費適正化計画などとの整合性も図られるでしょう。レセプト様式には患者の居住地の郵便番号が新たに加えられる見通しで、二次医療圏や都道府県をまたいだ患者の流出入を把握できるようになり、地域医療構想や医療計画における医療需要予測の精緻化が可能になります。医療費適正化計画の指標である糖尿病の重症化予防や重複投薬の防止は、外来や調剤の報酬見直しの重点課題になることは間違いありません。
最終的には政府で改定率が決定されますが、改定に詳しい関係者らは診療報酬本体の改定率はプラスマイナスゼロ近辺でのせめぎ合いになると予想しています

日経メディカルより引用