2017.12.13

「ローカーボダイエット」
ローカーボダイエットは、炭水化物を控え、肉類などタンパク質や脂質中心の食事を取ることで体重を減量させる方法です。若い世代を中心に広まっていますが、医学界では批判の声が強く、日本糖尿病学会は2013年に「推奨できない」と提言しています。今年11月、日本医師会と米穀安定供給確保支援機構主催の「食育健康サミット」が東京都で開かれ、そこでは、栄養のバランスが乱れやすい同ダイエットの問題点を指摘する声が相次ぎ、医師らが炭水化物を控えることの危険性を強調しました。東京新聞に掲載されていた医師らの声をご紹介します。
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京都大の森谷名誉教授は「炭水化物を取らないことで短期的に体重が落ちても、体内の脂肪分は変わらず、水分が減っているだけの場合が多い。標準体重でも体脂肪率の高い“隠れ肥満”の若者はむしろ増えている」と指摘した。教授が女子大学生103人を調査したところ、隠れ肥満は50%に達し、低血圧35%、冷え性21%などの問題もあった。この学生たちに、正しいダイエットとして、管理栄養士が調理したご飯、みそ汁、魚、野菜、果物などの三食(一食あたり四百キロカロリー)を二週間提供し、間食はしない生活を送ってもらったところ、体重は平均二・四キロ減。体脂肪は一・七キロ、ウエストも三・七センチ減った。交感神経の活動や脂質代謝も向上したという。
日本人の摂取カロリー量は昭和時代に比べ大幅に低下しているが肥満は増えている。「肥満や糖尿病の増加は食べすぎのせいではなく、座っている時間が長いことが一番の原因。立って動く時間を増やすことで、筋肉の減少を抑え、高齢期の介護予防にもつながる」と体を動かすことを勧めた。

早稲田大研究院の福岡教授は、若い女性の「やせたい願望」が栄養不足に直結する危険性を指摘した。体脂肪率の低下は、卵巣機能に影響し、月経周期が乱れたり、無月経になったりする。 妊婦の場合はさらに影響が大きい。妊娠初期に炭水化物の摂取が少ないと、赤ちゃんは低体重で生まれる傾向があるだけでなく、将来的に糖尿病や高血圧など生活習慣病の発症リスクも高くなる可能性があるという。

高齢の糖尿病患者の研究をもとに食育の問題を取り上げたのは、東京都健康長寿医療センターの荒木内科総括部長。カルシウムや食物繊維、緑黄色野菜などの摂取が少ないと、認知機能の低下のリスクが高まる傾向がみられたという。健康と長寿につながる食として▽米などの炭水化物の主食▽魚、鶏肉、豆類、大豆製品などのタンパク質の主菜▽野菜、海藻などビタミン、ミネラルの副菜を挙げ、「旬のものを食べるなど、食の多様性も大切」と強調した。

帝京大の寺本臨床研究センター長は、健康寿命を延ばすために、女性のロコモティブ症候群(骨、関節など運動器の障害)、男性のメタボリック症候群(内臓肥満と高血圧、高血糖などが組み合わさった状態)の予防が大切として、伝統的な日本食の利点を強調した。
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ローカーボダイエットは効果がすぐに現れますし、一見健康的な減量方法に見えていましたが、長期的に見ると体に良いとはいえないとわかりました。「減量」ではなく「健康」を目的とした食事を心がけていきたいものです。