2017.9.7

「咳ぜんそく」

咳は呼吸器を守るための防御反応です。鼻や口から吸った空気は気管支を通して肺に入ります。
その際、ほこりなどの異物が侵入すると、それを排除しようとして反射的に咳をします。咳は異物をからめとった痰を排出する役割もしています。こうした一過性の咳は基本的に問題ありません。薬で抑えるとかえって肺炎の原因になることもあるので、特に高齢者は注意しましょう。一過性の咳とは異なり放っておいてはいけない咳もあります。咳をすると約2キロカロリーを消費するといわれ、咳を頻繁にすれば体力を消耗します。夜中や明け方に咳き込むと睡眠が妨げられます。そのうえ重篤な病気が隠れている事もあります。咳の多くの原因は風邪やインフルエンザなどの感染症で、長引いても8週間で炎症はなくなり、自然と治ります。しかし、8週間以上続く咳は、慢性咳嗽といわれ、原因を探索する必要があります。
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がん、副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽、などの鑑別が必要です。胃酸の刺激が原因の食道胃逆流症や心理的な緊張や神経の過敏さが影響して咳が続く場合もあります。
中でも年々増加しているのが咳ぜんそくです。咳ぜんそくは、男性よりも女性に多く、ほとんどが大人になってから発症するといわれています。放置するとその3割は喘息に移行します。喘息とは気管支の粘膜に慢性的な炎症が起こり過敏になる疾患です。過敏になった気管支は刺激を受けると粘膜がむくんで気道が狭くなり、喘息発作が起こります。「ゴホン、ゴホン」という痰が出る湿った咳、「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴、息苦しさ、が特徴で中には呼吸困難で命を落とす場合もあります。これに対して咳ぜんそくは、気管支に炎症はあるが喘息ほど気道が狭くならないため息苦しさや喘鳴はありません。風邪から発症することが多いのですが、なんらかの物質に対するアレルギー症状から過敏性だけが残っている場合もあります。受動喫煙や会話、冷気や暖気、季節の変わり目、飲酒といったことが刺激となり、「コンコン」という乾いた咳が出るのです。いったん咳が出ると止まらない、夜や早朝に咳がひどくなる、咳止めや、抗生物質ではよくならない場合は、早めにかかりつけ医や呼吸器内科、アレルギー科を受診しましょう。
治療は、発作を抑える気管支拡張薬と炎症を鎮める吸入ステロイド薬による薬物療法が中心です。最近は両者を合わせた吸入剤もあります。適切に使用すれば副作用は少なく長く続けるのが原則です。咳ぜんそくは、喘息よりも治りやすい反面、再発しやすい疾患です。症状が治まっても自己判断しないで医師と相談しながら病気への理解を深め、根気よく治療を続けましょう。

  健康情報誌 こまど、より