2017.08.22

「かっとなるのは年のせい?」

カッとなって怒りだし感情を理性でコントロールできなくなる状態、高齢者に多いと言います。
それには医学的な理由があります。都内の精神科に通っている83歳の男性患者は1年ほど前から気に入らないことがあると、妻に暴言を浴びせたり暴力を振るったりするようになりました。几帳面な性格ですが、短気ではなかったといいます。診察を受けた結果、脳機能の低下と診断されました。

東京・中野区にある「あしかりクリニック」の院長で精神科の芦刈伊世子医師によると、人の理性は大脳の前頭葉という部分で制御されていますが、この機能が低下するとこうした症状が出ることがあるといいます。芦刈医師は「前頭葉が萎縮するのは認知症の1つで、記憶力などに問題はないが脳機能が低下することで感情の抑えが効かなくなって我慢ができない状態になる。早い人では60歳ぐらいから症状が出始める」と指摘します。

すべての人に症状が出る訳ではないものの、診察に訪れる高齢者で同様の症状が確認される人は少なくないということです。理性による制御が利かなくなり犯罪にまでエスカレートするケースもあります。
法務省の犯罪白書によると、おととし刑法犯で検挙された65歳以上の高齢者は4万7632人。平成元年に比べて7倍以上に増えています。高齢人口そのものが増えているため単純な比較はできませんが、65歳以上の人口10万人あたりの「割合」で見ても、3倍以上に増加していることがわかりました。

今、日本の平均寿命は男女とも80歳を超えて過去最高となっています。定年で勤め先を辞めたあと20年、30年と暮らすのが当たり前となりつつあります。そうした中、加齢による脳機能の低下を完全に防ぐのは困難です。また“仕事一筋”で生きてきた男性が子どもが独立し、夫婦だけとなった家庭で孤立してしまうといった話もよく聞きます。誰しも年をとることは避けられません。「加齢による変化」があることを自覚したうえで、日常生活の中で何か不快なことがあっても一拍置き、相手の身になって考える余裕が必要なのかも知れません。

NHK NEWS WEBより引用