2017年3月27日

「機能性表示食品」

牛丼でおなじみの吉野家ホールディングスは、機能性表示食品である「サラシア入り牛丼の具」を3月から通販サイトで発売しました。サラシアという植物から抽出したサラシノールという成分は糖の吸収を穏やかにする働きがあるといい、同成分を煮汁に配合しています。「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」と表示することで、血糖値が高い人などの需要を見込み、新たな市場開拓を狙っています。

2015年4月に始まった機能性表示食品制度により、メーカーは専門的な研究を踏まえた科学的根拠を消費者庁に届け出れば、健康機能をラベルやパッケージに記載できるようになりました。国の審査が必要な特定保健用食品(トクホ)に比べて、開発にかかる期間や費用を圧縮できる一方、商品の安全性や機能については、企業の自己責任となります。

東洋経済ONLINEの3月21日付記事によれば、2年間に届け出られた商品は800点近くあり、2016年の市場規模は452億円に達しました。雪印メグミルクの「恵 ガセリ菌SP株ヨーグルト」は「内臓脂肪を減らす」、江崎グリコのチョコレート「GABA(ギャバ)」は「一時的・心理的なストレスを低減する」と表示しています。そして4月4日、アサヒ飲料は機能性表示食品の「カラダカルピス」を発売します。うたい文句は「乳酸菌で体脂肪を減らす」です。体脂肪関連の機能をうたう商品は多く競争が激しいですが、近年の乳酸菌ブームを追い風に攻勢をかけます。トクホの審査には1〜2年かかりますが、機能性表示食品なら発売60日前までに届け出ればよく、需要の変化にタイムリーに対応できるのが利点です。

機能性表示は新商品だけではありません。カゴメは、1933年発売のロングセラー商品「カゴメトマトジュース」を16年2月から、「血中コレステロールが気になる方に」という機能性表示を加えて販売しました。中身や値段は変わっていないのに売り上げが急速に伸び、出荷数量は表示追加前と比べて73%増加したそうです。「トマトに含まれるリコピンの健康機能の科学的根拠を示すために、1300本以上の論文を調査した。ただ、トクホにする場合は商品を用いた臨床試験が必要なため、よりコストがかかる」(カゴメ・マーケティング本部の加藤宣司主任)とのことです。

機能性表示食品の市場は急速に拡大していますが、企業側が専門家の研究を都合よく解釈して届け出を行っている事態も生んでいます。科学的根拠として採用した論文の被験者は若年層なのに、実際のターゲットは高齢者という場合もあるようです。各社さまざまな思惑もあるでしょうが、目先の利益にとらわれず、高い倫理観を持って、消費者本位の商品開発という前提を守るべきでしょう。

消費者の立場でみると、同じ商品が2つ並んでいたら、何の表示もないものより、機能性の表示があるほうが効果が高いように感じてしまいます。そういった消費者の心理をついた商品は今後も増えると思います。また詳しく調べていきたいと思いました。

引用:東洋経済オンライン2017/3/21「牛丼やビールが突然「健康に良く」なったワケ」