2017年3月17日

介護・医療の情報サービスを提供する株式会社エス・エム・エスが認知症情報サイト「認知症ねっと」上で提供している「認知機能チェック」の受検者が、約1か月間で1万人を突破したと発表しました。結果を分析したところ、認知機能は50歳頃より徐々に低下をはじめ、55歳頃から明らかな低下がみられるとのことです。ここでいう認知機能チェックとは、認知機能を「記憶力」「計算力」「言語能力」「遂行能力」「判断力」の5つに分類し、それぞれの機能に対応した簡単な問題を解くことで、認知症の前段階と言われるMCI(軽度認知障害)で起こるとされる認知機能の低下を5分程度でセルフチェックできるサービスです。2016年11月7日~12月18日までの期間、有効受検者数11,379名(重複受検者などは除外済)の結果を分析したところ、

  • 認知機能は50歳頃には低下を開始する
  • 認知機能の中でも高次な「遂行力」「判断力」がより早期に低下している
  • 「言語能力」は70歳頃まで比較的機能が保たれる傾向である
  • 「記憶力」のうち「ワーキングメモリ」「遅延再生」の機能は50歳頃から低下が始まるが、「エピソード記憶」機能は70歳頃まで保たれる
  • 「判断力」のうち「注意力」が、他の機能に比べて早期から大きく低下する傾向がある

ということがわかりました。

 

このうち記憶力のワーキングメモリー(作業記憶)とは、一時的に記憶や情報を保持しておく能力、また保持した記憶を活用して同時に処理する能力のことをいい、会話・読み書き・計算などに欠かせません。

 

遅延再生とは、覚えた事柄を少し時間がたった後で思い出す能力のことであり、認知症になる人はこの能力が早くから落ちるといわれています。

 

エピソード記憶とは宣言的記憶の一部であり、個人的に体験したことの記憶のことをいいます。言語能力やエピソード記憶が比較的長く保持される一方、注意力やワーキングメモリー、覚えたことを少し経ってから思い出す能力、高次な遂行力が早期から低下するという分析結果は、認知機能の衰えに関する一般的な認識と大きな相違はないように見えます。そのため、40代からの予防が重要となってくるのです

 

50歳頃から徐々に低下し、55歳から明らかに低下していく認知機能。
人生100年時代、できれば40代から、少なくとも50代からは脳の健康に何らかの取り組みをしていくことが必要であり、その取り組みをした人たちは少なくとも認知機能の低下を最小限にすることが可能になるのでしょう。50代以降、どのような取り組みが結果を残していくのか、その方法や結果を探していきたいと思います。

『脳科学Tips2017.02.07』より引用