2017年3月9日

京都大学は3月3日、アトピー性皮膚炎に対する治療薬として開発中の抗IL-31受容体ヒト化モノクローナル抗体ネモリズマブに関し、安全性や有効性、最適な投与量などを調べる第2相国際共同治験を行い、抗IL-31抗体の臨床症状やかゆみに対する有効性が確認されたことを発表しました。この研究は、同大医学研究科の椛島教授らの研究グループが、九州大学、東京逓信病院、ドイツ、米国、英国、ポーランドの研究機関と共同で行ったものです。

 

アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア障害、かゆみ、湿疹を主徴とする皮膚疾患で、慢性的に回復と悪化を繰り返します。皮膚に発生したかゆみは、掻きむしることで皮膚が刺激され、さらにかゆみが増すという、掻けば掻くほどかゆくなる悪循環が起こることが知られており、患者とその家族のQOLに悪影響を与えます。アトピー性皮膚炎によるかゆみの発生にはIL-31が関与していることが報告されており、IL-31を標的としたアトピー性皮膚炎のかゆみの治療戦略が期待されていました。

ネモリズマブは、IL-31と結合する受容体IL-31RAのみを標的とするヒト化モノクローナル抗体で、IL-31とIL-31RAとの結合を阻害することにより薬効を発揮するそうです。ネモリズマブの臨床試験成績については臨床第1相試験の結果が、2015年に報告されました。今回結果が報告された試験は、これに引き続いて実施された日米欧5か国の第2相国際共同試験です。同試験では、軟膏などの外用剤で十分な治療効果が得られない国内外の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者264名を、ネモリズマブを4週間ごとに0.1、0.5、2.0mg/kg投与する群と、8週ごとに2.0mg/kg投与する群、プラセボ群(4週間ごと)に約50人ずつランダムに割り付け、12週にわたり皮下投与したそうです。

その結果、主要評価項目である12週時のそう痒視覚アナログ尺度変化率では、プラセボ群に対し有意な改善効果を認めたそうです。また、アトピーの重症度を示すEASIでも、プラセボ群に対してネモリズマブ投与群では有意に改善したそうです。 同論文では補足として、活動量計による評価で睡眠時間の増加も報告しています。抗IL-31受容体中和抗体の投与1週間後には、着床してから入眠するまでの時間がプラセボに比べて15分程度早くなり、安眠している時間も約20分増加したそうです。投与3週後には安眠している時間がプラセボに比べ40~50分長くなることも確認されたそうです。

 

アトピー性皮膚炎の患者は、かゆみのために寝付くまで時間がかかり、夜中にかゆくて目が覚めてしまうことが知られていますが、これらの結果は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎において、ネモリズマブがかゆみ抑制効果を表すこと、さらに睡眠の質を向上させ、QOLの向上に寄与することを示すものとされています。今後、IL-31の制御がアトピー性皮膚炎の新たな治療手段やQOL向上の一助となる可能性が期待されると同研究グループは述べています。

参考資料:京都大学ホームページより引用