体の中には、胸腔と腹腔を隔て、肺を動かして呼吸する手助けをする「横隔膜」と呼ばれる膜状の筋肉があります。

この横隔膜には、血管や食道などが通る穴があいていますが、このうち、食道が通る穴から、本来、横隔膜の下部にあるべき胃の一部が食道の方に飛び出してしまうのが食道裂孔ヘルニアです。
加齢や生活習慣などが原因で起こる場合と、生まれつき食道裂孔ヘルニアを起こしやすい場合があります。高齢化の進行や、食生活の欧米化により肥満者が増えていることから、近年増加傾向にあります。
食道裂孔ヘルニアは、3つのタイプに分類されます。食道胃接合部(噴門部)が胸部側へ移動してヘルニアを起こす場合には滑脱型と呼ばれ、食道裂孔ヘルニアで最も多く見られます。
また、食道裂孔ヘルニアになっている方は、噴門部に圧力がかかりやすく、胃食道逆流症などにもなりやすいといわれています。

<症状>
食道裂孔ヘルニアは症状が出ない場合が多いのですが、胃酸が食道に逆流しやすい状態になっているため、胸やけや呑酸などが症状として現れることがあります。
ただし、飛び出した胃や食道が横隔膜に締め付けられてしまっているような場合は、食べ物がつかえる感じや胸のあたりが強く痛むことがあります。

<治療>
生活習慣の改善:
胃酸が食道に逆流してしまう場合は、食事の量を抑えたり、脂質や肉を食べ過ぎたりしないように気をつけます。
胃酸の出過ぎを抑え、肥満を解消するための食事として低脂肪食が推奨されています。
その他にも、食後すぐに横にならない、ベルトやコルセットで腹部を締め付け過ぎないなど、生活習慣の改善により、症状が和らぐこともあります。
妊娠中は胃が圧迫されるので、お腹に圧力がかかるような姿勢をとらないようにするなど、注意が必要です。

薬物療法:
胸やけなどの症状がある場合は、胃酸の出過ぎを抑える薬などを服用します。

手術療法:
胃や食道が締め付けられすぎる場合や、投薬による治療で改善が見られない場合は、横隔膜の緩みを修復し、胃から食道への逆流を改善するための手術をすることがあります。
以前は開腹手術や開胸手術が行われていましたが、近年、腹腔鏡手術の技術が向上したため、患者さんへの負担が少なく、手術創が小さくて済む、腹腔鏡を使用した手術が広く普及してきています。

  (おなかの健康ドットコム より 引用)