肥満と総死亡が関連することはよく知られており、WHOはBody Mass Index(BMI=体重(kg)/身長(m)2)が25-29.9を過体重、30以上を肥満と定義しています。この基準は、18歳以上の成人に世界共通で適用されていますが、近年、高齢者では過体重は総死亡リスクにならないこと、むしろ肥満より痩せが死亡リスクに関連すること、が報告されています。

 日本では高齢者が急速に増えています。そこで、私たちはJACC Studyのデータを用いて、高齢者における肥満度を総死亡リスクとの関連を検討しました。
 

 今回の結果から、日本の高齢者(65歳以上)では、BMIが20から29.9の間で総死亡リスクが低く、それより痩せている場合、痩せの程度が強くなるほど総死亡リスクが上昇することが確認されました。痩せた方では栄養分の貯蔵が少なく感染症に弱い可能性も考えられます。実際、今回の検討でも、死因を見ると痩せた方に肺炎が多いという結果でした。

 高齢者において、若年・中年期で知られているような肥満による総死亡リスク上昇がみられなかったことについて、理由ははっきりとはわかりません。可能性としては、肥満による悪影響を強く受けた方々が高齢期に達する前に亡くなってしまったかもしれないこと、高齢期には体重が多いことによるよい影響(たとえば栄養貯蔵)の方が悪い影響より強い可能性、また高齢者では正常体重者でもメタボリックな危険因子を持つ割合が高いこと(そのため見かけ上、過体重者のリスクが小さくなる)などが考えられます。

 私なお、今回の研究は観察研究ですので、痩せている方が体重を増やすことで死亡リスクを低下させられるかどうかについては不明で、そのような働きかけを推奨するものではありません。

(publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/index.html より引用)