血液中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」が続くと、痛風の原因となる。ところが、尿酸値が低過ぎても問題で、この状態を「低尿酸血症」という。その一種である「腎性低尿酸血症」は、自覚症状はないものの、激しい運動によって腰痛や吐き気などを生じ、急性腎不全になることがある。東京薬科大学病態生理学教室の教授で、東京慈恵会医科大学付属病院腎臓・高血圧内科でも外来を受け持っている市田公美医師に聞いた。

 「血液中の尿酸値が1デシリットル当たり2ミリグラム以下になると、低尿酸血症と診断されます」と市田教授は説明する。

 低尿酸血症の一つに、腎臓が原因となって起こる腎性低尿酸血症がある。自覚症状はなく、健康診断で尿酸値が低いことを指摘されて病院を受診し、初めて診断されることが多いという。先天的な病気で、有病率は男性で0.2%、女性で0.4%と推定される。「日本人に多い病気です」と市田教授。

 運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質などに含まれるプリン体が、肝臓で分解されると尿酸となり、その3分の2は腎臓から排せつされる。腎臓から尿となる液体に排せつされた尿酸は90%以上が再吸収され、残りの6~10%が尿中に排せつされる。しかし、腎性低尿酸血症の患者ではその仕組みに生まれつき異常があり、再吸収が不十分になる。市田教授は「尿酸を過剰に尿に排せつしてしまい、血液中の尿酸値が著しく低くなります」と説明する。

 腎性低尿酸血症そのものの治療法はなく、日常生活の工夫で合併症を予防することが治療の目標となる。注意が必要な合併症は、激しい運動をした後に腰背部痛、吐き気、頭痛などが起こる運動後急性腎不全で、腎性低尿酸血症患者の1割弱にみられる。市田教授は「部活動をしている中学生などが、運動後急性腎不全を発症することがあります」と話す。

 運動後急性腎不全は、運動時に脱水気味であったり、風邪を引いて解熱鎮痛薬を服用していたりするなど、腎性低尿酸血症以外の要素が加わったときに生じることが多い。そのため、短距離走や筋力トレーニングなどの無酸素運動や激しい運動は避ける、普段から運動前の水分補給を心掛ける、体調が悪いときには比較的軽い運動にとどめる、といった対策が必要となる。

 運動後急性腎不全は1週間から1カ月ほどで軽快するが、繰り返す患者も多く、長期的には腎機能が低下する恐れがある。そのため、1年に1回は腎臓の機能をチェックするとよい。市田教授は「尿酸値が低過ぎる場合は、放置せずに受診しましょう」とアドバイスしている。

(時事メディカル より引用)