夏に注意が必要な病気というと、まず浮かぶのが「熱中症」です。しかし、夏には熱中症以外にも注意が必要な重大な病気があります。それは、脳や心臓の血管が詰まる「脳梗塞」「心筋梗塞」です。
脳梗塞や心筋梗塞は冬に多いと思われていますが、実は体内の水分が不足しやすい夏に発症する人も多くいます。
 夏は汗を多くかくため、それに見合った量の水分を補給していないと、体が脱水症状に陥って、血流が悪くなったり、血液の塊である血栓ができやすくなります。血液がドロドロになって、心臓発作などを起こしやすくなります。
 水分を摂取しても、体全体に浸透するまで約20~30分の時間がかかります。水を飲んでも、すぐに血液の流れがよくなるわけではありません。また、気付かないうちに、皮膚などからも水分は蒸発します。汗をかいていなくても、こまめに水分補給を行うことが大切です。
 とくに暑い夏は、就寝中に脱水が起こりやすいといえます。眠っている間に平均するとコップ1杯(200mL)程度の汗をかいています。気温の高い夜には、それ以上の汗をかくことも多いでしょう。また眠っているときは、一般に血圧が低下するため、血栓ができやすい状態になっています。予防のために、寝る前に水を1杯飲むようにしましょう。枕元に水を置いて、いつでも飲めるようにしておき、トイレに立った後などに少しでも飲むようにすると、睡眠中に汗で失った水分を補給できます。また、朝起きたときに水を1杯飲むことも、予防につながります。
寝る前の飲酒には注意が必要です。アルコールは発汗作用や利尿効果があるため、寝ている間に水分が失われていきます。夜、寝る前にお酒を飲んで水分をとったという気になっても、逆に、利尿効果により血液の中の脱水状態を起こし、血液を『サラサラ』から『ドロドロ』にしてしまって脳梗塞を起こす場合があるのです。寝る前にお酒を飲んだあとは、必ず水分をとることを忘れずに行いましょう。

加齢とともに誰でも動脈硬化が起こりやすくなりますが、それを促進するのが肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病です。こうした病気をもっている人、あるいはその予備群の段階の人は、もともと脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高いだけに、夏の脱水には十分気を付けなければなりません。食生活や生活習慣の見直しとともに、水分摂取も意識的に行い、夏を健康に過ごしましょう。