従来、わが国において医薬品選択は、治療現場における各処方医の判断に委ねられることが多かった。しかし、2015年頃から、財務省の財政制度等審議会・財政制度部分科会や厚労省の社会保障審議会・医療保険部会等で、生活習慣治療薬等の処方の在り方が議論されるようになった。

 2016年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太方針2016)」では、「生活習慣病治療薬等の処方の在り方等について」と言及され、2017年11月の中央社会保険医療協議会・総会では、降圧薬などの生活習慣病治療薬の標準的な薬剤選択を推進する方策としてフォーミュラリーが議論された。2017年10月の内閣府の経済財政諸問会議では、ジェネリック医薬品の使用促進策として、フォーミュラリーを病院ごとに策定するように提案されている。
 このような背景により、フォーミュラリーが広く活用されることが期待されている。

フォーミュラリーとは

 医薬品は、有効性、安全性、品質、剤型、使用性および経済性などの評価に基づいて選択される。フォーミュラリーは、使用する医薬品の選択基準や投与指針を含む「標準化した処方薬集」ととらえることができる。

医師は多くの患者を診察し、比較的短時間でそれぞれの患者に適切な薬を選択する。自身の診療領域の中で、多くの患者に処方する「自身の手持ちの医薬品」を事前に持っており、用法・用量、副作用、使用上の注意、患者への説明などを熟知しているだろう。医師は、この「自身の手持ち医薬品」を用いることで、薬物治療を標準化しているといえる。この概念を一人の医師ではなく、診療所、病院単位へと、疾患ごとに発展させた方法がフォーミュラリーと考えればイメージしやすい。
 例えば高血圧といった慢性疾患に対する同種同効果薬において、専門家および非専門家の医師でも処方できる医薬品を、第一選択、第二選択と標準化することでフォーミュラリーが形成される。

(週間医学界新聞より)