新型コロナウイルスの感染拡大で需要が増えたマスクや手袋などのいわゆる“コロナごみ”が、世界 各地の海や川で見つかっている。

環境団体は、こうしたごみが生態系への影響が懸念されている マイクロプラスチックになるなど環境への脅威になるとして、警鐘を鳴らしている。 アジアを中心に活動している香港の自然保護団体によると、香港周辺の海岸では、ことし 2 月末 頃から“コロナごみ”が目立つようになりまたヨーロッパでも、南フランスを中心に海のごみを回収し ているNPOは 5 月頃からマスクや消毒用アルコールの空き容器などが目立ち始めたとしている。 “コロナごみ”は、日本の河川や海岸でも相次いで見つかっている。2005 年から神奈川県藤沢市 の片瀬海岸で清掃活動を行っているNPO法人「海さくら」によると、新型コロナウイルスの影響で 中断していた清掃を再開した先月中旬以降、多くのマスクや除菌ペーパーなどが見つかるようにな った。

「海さくら」の古澤理事長は「日本だけの問題でも、世界だけの問題でもない。みんなの問題 として、どんなマスクを使うのか、どう捨てるのか、きちんと考えることが大切」と話し、マスクなどを 利用する際は、環境への影響を十分考慮してほしいと呼びかけている。 こうした中、世界各地で植物由来の素材を使ったマスクなどの開発が相次いでいる。カナダのコロ ンビア大学では、木の繊維から、微生物によって水や二酸化炭素などに分解されるマスクを開発し ている。またイギリスの企業は、プラスチックを使わないフェイスシールドの開発に成功した。顔を覆 う部分は木材パルプを使いながらも透明度を確保したほか、値段も 1 つ日本円で 200 円余りと、 プラスチック製品とほとんど変わらない。創業者は「木材パルプや紙など、すべて土に返る物で作っ た。需要の増加に備えて、週に 200 万個生産できるようにした」と話している。

こうした取り組みは 日本でも始まっていて、植物から取り出したでんぷんなどを使ってマスクを製造する企業も出てき ている。 世界各地で “コロナごみ” が見つかっている状況について、環境政策が専門の原田禎夫准教授 は「海外に限った話ではなく、国内の河川や海岸でもマスクなどは、たくさん回収されている。不織 布のマスクは土に返る布ではなく、プラスチック製のものだが、知らない人も多い」として、「まずは、 マスクがどんな素材でできているのかを消費者にきちんと伝えることが大切」と話している。また、プ ラスチックに代わる素材を使った製品の開発については、「環境への負荷が少ない、新しい素材で 作ることも大事だが、もともとあって使える物は積極的に活用するべき。感染防止対策として使い 捨てプラスチック製品が必要な医療現場には優先的に回していくなど、環境への負荷と感染対策 のバランスを考えながら利用していくのが賢明な選択ではないか」と述べた。

そのうえで、一人一人 が環境問題への意識を持つことは大切だとしながらも、個人のモラルに頼るだけでは解決しないと して、「科学的根拠に基づき、何が感染対策に有効で、コスト面でも実現可能なのか。順序立てて 考え、補助金を活用するなど、社会全体としての仕組み作りが重要」と指摘した。

(NHKニュースより引用)